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2015年7月8日
性犯罪の罰則に関する検討会
座長 山口 厚 様

    性暴力被害の実態に即した
    刑法強姦罪の見直しを求める要望書


                         
「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」は、被害者、支援者、弁護士、研究者など様々な立場から性暴力に関する包括的な法整備を求めて活動している全国組織です。
2014年10月に法務省に貴検討会が設置され、刑法強姦罪の見直しについての議論が行われたことにつきましては、明治40年の制定以来100年以上ほとんど改正されてこなかった刑法強姦罪の見直しがようやく実現するのではないかと大きな期待を寄せてまいりました。この夏にも議論の取りまとめ作業に入られるとお聞きしておりますが、性暴力被害の実態に即した刑法強姦罪の見直しの実現を切望しております。つきましては法務省のHPで公開されている議事録をもとに、貴検討会の取りまとめの報告書に盛り込むべき内容について下記のように要望いたします。

第1 性犯罪の構成要件及び法定刑について
1 性犯罪の法定刑の見直し
【要望事項】

強姦罪の法定刑を強盗罪と同等もしくはそれ以上に引き上げるべきである。「魂の殺人」とも言われる強姦という犯罪行為が及ぼす被害者への影響の深刻さに対して、現行の強姦罪の法定刑が見合っていない。法定刑の引き上げによって女性に対する暴力は許されず、女性の人権を重視していると社会に示すことにもつながる。強姦罪で有罪になっても加害者が執行猶予ですぐに釈放されてしまうことも少なくない現状において、被害者の納得できない様子を身近で見聞きしている立場からも、酌量減刑なしに実刑となることは重要である。特に、子どもに対する性暴力の深刻な影響についての実態に即して、被害者が年少者の場合の加重も必要である。

【取りまとめの報告書へ盛り込むべき内容】
○強盗罪とのバランスについて
・「法定刑の重さから、法が被害法益をどう評価しているかということも読み取れるという関係に立っている」ことから「果たして今のような形で、強盗よりも強姦の法定刑が軽いままに放っておいてよいのかどうかが問題である」(第9回検討会での井田委員の意見、7頁)
・強盗罪と強姦罪の法定刑のアンバランスさについて「この論点は、実は随分前から指摘されたものであり、繰り返しそのことが問題提起されているということは、それだけ多くの方疑問に思っているということでしょう。法律専門家がこれまで説得に成功してこなかったことについては、やはりそれなりに理由がある」(第9回井田委員、7頁)
・「(強姦罪の)保護法益という考え方が、人の尊厳に係る、望まない性行為を強制されるという、そのことへの重さの評価」として考えた場合に、法定刑の下限を引き上げるべきである。(第9回小木曽委員、8頁)

○特別な事情がなければ執行猶予がつく現状について
・「執行猶予にならないということを考えると、5年にすることになる」(第9回角田委員、6頁)
・「現行では酌量減刑をしなくても、つまり特別に刑を軽減する事情を認定しなくても実刑を回避できる規定になっている」ことから「強姦罪についても、下限を1年引き上げて、酌量軽減なしには実刑を回避できないようにする」(第9回井田委員、7頁)

○被害者が年少者の場合の刑の加重について
・「子供の場合は長く続くというだけではなくて、人間として成長していくということ自体がこの性犯罪,性暴力被害によって阻害されるという質の違う被害を受けている」(第9同角田委員、8頁)
・「司法の場で,そういった子供に対する精神的な影響というものを正しく評価していただきたい」(第9回斎藤委員、9頁)
・「(未成年者、年少者が被害にあった場合に)社会に対して、非常に重大な犯罪なのだということをきちんとメッセージとして送る」ためにも加重するべきである。(第9回角田委員、8頁)

2 強姦罪の主体等の拡大
【要望事項】

強姦罪の行為者,被害者に関して、性差のないものとすべきである。男性や性的マイノリティが意に反して性的な攻撃を受けた場合に、様々な後遺症に苦しむことは、女性と変わらない。
【貴検討会の議論について】
強姦罪の主体等に関して性差をなくすべきであるという検討会の議論に賛成する。

3 性交類似行為に関する構成要件の創設
【要望事項】

肛門や口腔などへの挿入行為について、強姦罪と同様の刑,あるいは,強制わいせつ罪より重い刑で処罰すべきである。肛門性交,口淫等の被害は、被害者の身体への性的な侵害行為として、深刻なトラウマを抱える。口内に射精されたことにより、食事ができなくなった被害者もいる。また、挿入する行為だけではなく、挿入させる行為も処罰対象とすべきである。男性器以外の異物の挿入も処罰対象に入れるべきである。

【取りまとめの報告書へ盛り込むべき内容】
○肛門性交、口淫等の被害について

・「加害者の性器を被害者の身体に挿入するということに,それを内容とする性的強制行為,これは恐らく被害者に与えるダメージというのはかなり重いものがあって,強制的な性器の結合と同等程度の重さを持っているのではないか」(第8回井田委員、22頁)
・「通常は排泄のために使われる身体の部位を,通常は食事のために使うといいますか,その部位に入れるというわけですので,これはやはり被害者側の感じる,与えられるダメージというのは非常に大きいものがあるのだろうと。そうなると,基本的には,まとめて言えば,通常の膣性交と肛門性交と併せて口淫,つまり性器を口の中に挿入するような性的行為というのは,これは重い類型に含ませるべきなのではないか」(第8回井田委員、23頁)
・「性器の挿入に関しては,膣性交であっても,肛門性交であっても,そこに大きな差があるということは不自然であると考えています。そして,口腔への性器の挿入に関しても,性器を口腔に挿入するという状況を考えると,膣性交,肛門性交と大きな違いがないと考えております。それは被害者の受けるダメージとしても大きな違いがないということがあるのです。そして,手指や異物の挿入に関しましても,膣及び肛門に関しては,性交と近いのではないか」(第8回斎藤委員、24頁)

○する行為、させる行為について
・「強姦罪における性差をなくすということがあり,私も性差はなくすべきだろうと思っておりますので,性差をなくすという点をより重視して,挿入する,挿入させる両方の行為を,侵害性の点で少し違いがあるにしても,同じ類型として扱うということもあり得る」(第8回佐伯委員、24頁)
・「自分の身体に対する性的なコントロール権を奪われるという点では,させる行為というのも同じではないか」(第8回角田委員、25頁)
・「性別に関係なく,無理矢理意に反した性行為をさせられるということは,被害者に大きな苦痛をもたらす」(第8回斎藤委員、25頁)

4 強姦罪等における暴行・脅迫要件の緩和
【要望事項】

性暴力の実態に即して、暴行・脅迫要件を緩和し、「被害者もしくは第三者に対する暴力の行使、暴力の威嚇もしくは(暴力への恐怖、拘禁、心理的抑圧または権力の濫用などの)強制によって、または強制的環境に乗ずることによって」などの表現を検討していただきたい。また、被告人が明示の同意を得なかったことを検察官が立証するようにして、抵抗を不問にすることを提案する。
第9回の検討会において「暴行・脅迫要件を一般的に緩和ないし撤廃することについては否定的な御意見が多く述べられましたが、暴行・脅迫を用いない場合,あるいは非常に軽微な暴行・脅迫しかない場合であっても,加害者と被害者の地位・関係性を利用して性的な行為が行われる場合については,暴行・脅迫要件を緩和あるいは撤廃した新たな構成要件を作るということについては考えられるということで,次の論点の議論に移っております」とされている。貴検討会の議論において、現行の暴行・脅迫要件が、被害者に要求している抵抗の程度が厳しいため救われない被害者が少なからず存在するという実態が十分に反映されたのか疑問である。検討会では、主に暴行・脅迫要件の撤廃が妥当であるかが議論されていたように思われるが、暴行・脅迫要件の緩和案として、下記、角田委員の「偽計」「不意打ち」「威力」などの要件の追加についての意見を報告書に盛り込むべきである。

【取りまとめの報告書へ盛り込むべき内容】
○暴行・脅迫要件に要件を追加する提案
・「不同意を表すのは,この暴行・脅迫,心身喪失,抗拒不能だけではないということなので,それらについてもやはり不同意性交罪として処罰する必要があるのではないか」「(具体的には)偽計とか,それからフランス刑法では不意打ちというものがあると書いてあります。また,威力というのも私はここに入ってもいいのではないかと思います。それと,薬物の使用もです」(第6回角田委員、3頁)
・「例えば威力という場合,支配的関係,その後の関係性の議論のところでやはり拾えないものが出てくる。それは威力ということで捉えるべきではないか」「例えば夫婦間強姦で,繰り返されたドメスティックバイオレンスの結果,もう妻は夫のさしたる暴行・脅迫がなくても,不同意ながら性行為に応じさせられている例がたくさんある」(第6回角田委員、3頁)
・「(知的障害がある場合に)暴行・脅迫とか抗拒不能とか心神喪失のどれにもうまくはまらないということになってくる」「現場においては加害者側のそれほど激しい暴行・脅迫もないということが起きてきたときに,こういう事案が処罰されなくていいのだろうかというのは非常に疑問があります」(第6回角田委員、4頁)

○現行の暴行・脅迫要件と性暴力被害の実態とのかい離について
・「犯罪に遭遇したことのない人には分からないかもしれないのですけれども,犯罪に遭遇した人は,(中略)何らかの恐怖を感じたときに,体が凍り付くとか,声が出なくなるという現象が起きている」「被害者が体感していることと一般に求められる暴行・脅迫要件との差が余りにも激しいと感じています。そしてそれが,暴行・脅迫要件を撤廃してほしいというヒアリングでの意見につながったのではないか」(第6回斎藤委員、5頁)
・「心理学,若しくは精神医学の中で,何か恐怖に遭遇したときに意識が切り離される解離であるとか,感情が抑圧される麻痺ひであるとかという現象があります」「そういう現象が明らかにあるにもかかわらず,求められている暴行・脅迫要件まで届かないという,この差が起きやすいということにこの暴行・脅迫要件を撤廃してほしいという意見はつながっているのではないか」(第6回斎藤委員、5頁)
・「無罪若しくは不起訴になった事例に関して,被害者に,私たちはこれを犯罪だと思うけれども,法律上立証するのはすごく難しいのだと,司法手続の中では犯罪という認定が得られないけれども,でも私たちは犯罪だと思っているのだよと,被害者に説明をすることが日常,被害者支援の中では行われています」「無罪あるいは不起訴になった際に様々な心情を抱く被害者の方たちが少しでも救われるであるとか,被害者に納得のいく形でこれが難しいということが説明できるような」状況が整うことを望んでいる。(第6回斎藤委員、10頁)
○実務家の教育について
・「実務の方からは,今の要件の中でほとんど問題がないと,適切に行われているという,そういうお話があったのですが,ただ実際に見ておりますと,検察官にしろ裁判官にしろ,やはり被害者の側に何が起きているかを十分理解されていないと思わざるを得ない状況があります」(第6回角田委員、10頁)
・「もし要件をこのままにしておくということであれば」「実務家の教育をその点についてどうするかということは残された問題ではないか」「問題なく扱われているのであれば,おそらく被害者からもいろいろな注文や苦情は出てこない」「教育をどうするか,別途お考えいただきたい」(第6回角田委員、10頁)

5 地位・関係性を利用した性的行為に関する規定の創設
【要望事項】

指導的立場にある者、保護する責任のある者について別犯罪類型として加重処罰が必要である。近親者による加害行為については、別途重い犯罪類型を設けるべきである。いずれも現状の「暴行又は脅迫」がなくても、犯罪が成立しうることとすべきである。また、被害者の同意は犯罪の成否に影響しないようにすべきである。
 第9回の検討会において、地位・関係性を利用した性的行為に関する新たな「規定を設けるべきではないかというご意見が相対的には多かった」「具体的には、それが利用された場合に、被害者の有効な同意が類型的に想定できない、そういう支配関係が認められるような地位・関係性を利用したことが必要なのではないかというご意見が基本的に支持されていたのではないか」ということについて評価したい。さらに親子関係に限定せず、同居の支配関係まで広げる、施設の関係など更に広げるという方向性を盛り込んでいただきたい。

【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
○具体的な地位・関係性について

・「教師・生徒とか雇用の関係は,強姦罪としてなかなか刑法的に評価されにくいので,結局多くの被害者は民事のセクシャルハラスメントでの損害賠償という形で法的な救済を求めているわけです。しかし,セクシャルハラスメントという損害賠償請求裁判にまでなる中身はほとんど本来は強制わいせつ罪ないしは強姦罪と評価されるべき事案なわけです。これは,大人同士であっても,(中略)加害者からの支配をなかなか排除できないという関係があります。そういうものについては救わなければいけないのではないか」(第6回角田委員、12-13頁)
・「障害者とその施設にいる人の問題,これもやはり親子と同じような非常に強い,生活の保障も含めたような関係にある」(第6回角田委員、13頁)
・「(医師と患者は)ノーという意思表示ができるような基本的な関係がないというのが非常に多くの場合ではないかと思います。それに患者からすれば医者に命を預けているわけなので,どうしてもその人の言うことを聞かないという発想がなかなか出てきにくいということがある」(第6回角田委員、13頁)
・「例えばスポーツなどの選手が自分が所属している団体の,直接のコーチだったら支配,被支配の関係が明らかですが,そうではなくて自分が所属している団体の役員という人が加害者になったケース」について「そういう関係になったとき,自分のその後の身の振り方とか,スポーツを続けていく上でのこと等々を考えて,やはり支配に屈せざるを得ないような関係になっている」(第6回角田委員、13頁)
・「障害者はもちろんですし,親子,教師,雇用者,そして指導者と指導される者の関係と言ってしまうと少し広いので難しいかもしれませんが,自分の将来がこの人に逆らったら阻害されるであろうと認められるような指導と被指導の関係など,特に感情や行動がとても制限されるということは考えられるので,この辺りは暴行・脅迫要件がほかの強姦よりも緩和された要件で認められてほしいということは被害者支援の立場からは願っている」(第6回斎藤委員、15頁)
・「関係性というとき,かなり広い関係性を実際には考えないと難しいのではないか」(第6回角田委員、18頁)

○刑を加重するべきであるかどうかについて
・「基本的には加重理由になるべきではないかと思っています。つまり,既にできている支配的な関係を利用して,更にその人の性的自己決定権なり性的自由を侵害するということなので,それは非常に悪質ではないか」(第6回角田委員、13頁)
・「特別な人間関係の中で,しかも今言ったような関係は,子供でも,生徒でも,被雇用者でも,大体全部被害者は加害者を信頼していることが基礎にあると思います。そういう場合にその信頼関係を逆手にとって性的自由を侵害されるということなので,それは当然加重ということを考えるべきことではないか」(第6回角田委員、13頁)

6 いわゆる性交同意年齢の引上げについて
【要望事項】

暴行・脅迫がなくても強姦罪等が成立する範囲を現行よりも引き上げるべきである。義務教育である中学生が被害にあった場合に、成人と同じような暴行・脅迫要件を適用することは、中学生を危険にさらすことになる。年齢では15歳が妥当ではないか。年齢の錯誤については免責されないように規定すべきである。少年加害者の場合は、被害者との年齢差や性的攻撃の性質によって判断すべきである。

【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
○13歳から18歳の現状について

・「13歳の被害者の例がかなりあります。それが児童福祉法違反等で処罰されるにとどまっていて、事例を見ても、これでいいのだろうかと首をかしげるものも結構あります」(第9回井田委員、28頁)
・「(12歳の二人がキスしたからといって強制わいせつ罪で家裁に送っているということはないのだから)例えば、1歳年齢を引き上げたから破壊的な結果になるというはずはないのです。そんなことよりも、むしろ目の前にいる13歳の被害者を救うということの方がはるかに大事なのではないか」(第9回井田委員、28頁)
・「私自身の中学校に勤務していた経験や,学校関係者からの意見を総合して考えると,13歳と15歳というのは大分違っていまして,中学生は成長が著しいと感じます。13歳というのが本当に小学生とほとんど同じぐらいである,15歳はそれに比較すると高校生に近いほど成長しているということがあります。13歳や14歳の自我の不安定さや幼さを考えますと,せめて15歳未満であるとか14歳未満であるというのがいいのではないかと思います。また,思春期は脳の発達が著しい時期で,理性的な判断ができるようになる能力,若しくは人間関係の認識ができるようになる能力の伸びる時期です。それに個人差を考慮しますと,13歳未満という,心理学でいうところの思春期以前の小学生年齢は,あまりに低い設定であると考えられます。中学生年齢でも,理性的な判断が困難であることは,十分に考えられるのです。従って,15歳未満あるいは14歳未満の中学生年齢の中で,同意能力の有無を考えた方が適切ではないか」(第9回斎藤委員、29-30頁)
・「強制わいせつと強姦とで、その年齢というのは別に考えることも可能ではないか」(第9回角田委員、28頁)

7 配偶者間における強姦罪の成立について
【要望事項】

配偶者間においても強姦が成立することを明記するべきである。夫から激しい身体的な暴力を伴う状況で、強姦され、殺されそうになっても、暴行罪・強要罪に問われることがあっても強姦罪で罰せられることはない現状がある。特に配偶者間の強姦では、望まない妊娠、その後の中絶または出産を繰り返すことも起こりやすい。強姦による妊娠や中絶について加重処罰が必要である。

【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
○犯罪として明確化することについて

・「確かに刑法第177条は何も言っていないので,配偶者による強姦は成立するのだということは言える」けれど「やはり実態はかなり違っているのではないか」「その実態を改めるためにはやはり何か立法的な手当が必要ではないか」(第5回角田委員、4頁)
・「実際に被害を受ける女性たち,あるいは彼女たちが最初に相談に行く警察,そのレベルで」「それも犯罪だということできちんとした法的な救済を受けられるかということを考えたときには,(中略)注意的な規定が必要ではないか」(第5回角田委員、5頁)
・「DV防止法がそうであったように、法律に明記されることによって一般の人の意識が変わって、そこに必要なメッセージが送られるのではないか」(第5回角田委員、6頁)
・「一般の人々はやはり夫婦間だから駄目だと,実際に警察で言われたという例も最近でも知っているわけなのです。そういうことがあるので,それは違うのだよと。夫婦間であろうとなかろうと」「少なくともあなた方は犯罪ではないと思っているかもしれないけれども,犯罪なのですよということをやはり明確にする必要があるのではないか」(第5回角田委員、6頁)

第2 性犯罪を非親告罪とすることについて
【要望事項】

性犯罪すべてについて非親告罪とするべきである。ただし、被害者の意思の尊重・プライバシーの保護、私生活の平穏の保護は、別途講ずる必要がある。
子どもが未成年の場合は保護者が告訴権者になるが、子どもが被害を訴えても母親がためらうこともある。近親姦の場合に、母親が加害者に逆らうことができないなどで、告訴できない場合もある。
また、被害者に対して被疑者の弁護人から執拗に告訴の取消を求められ、被害者の精神的な苦痛になっていることも少なくない。非親告罪になることで、被害者の精神的な負担が軽くなることが期待される。

【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
○親告罪の存在理由について

・「親告罪の存在理由は,被害が軽微であるということと,被害者の名誉,プライバシー保護であると理解されてきている」が「現在では単純強姦の場合であっても、重大な犯罪であるというのは共通認識であろう」「被害者の名誉、プライバシー保護については、政策的な保護が図られるべきである。現にそのような努力がされている」(第8回小木曽委員、6-7頁)
・「国際的に見ても,今,諸外国は一様に非親告罪化しているということをあわせ考えると,やはり(非親告罪化)その方向に進むべきではないか」(第8回井田委員、8頁)

○年少の近親姦の被害について
・「(低年齢の被害者の場合に)法定代理人が加害者であるような場合に非親告罪化しますと、加害者の罪を問いやすくなることが期待されるのではないか」(第8回小木曽委員、7頁)
・「時には告訴権者の意思に反する起訴も必要だというのは,被害者が年少で告訴能力がなく,親権者が加害者だというようなケースを考えるときには,納得できる」(第8回井田委員、8頁)

○被害者の負担軽減について
・「(親告罪であると)被害者の意思決定に立件と訴追の可否が依存しているということから,被害者が正面から踏絵を踏まされるといっても差し支えないような重い決断を迫られる事態になっている」(第8回井田委員、8頁)
・「被害者の方からよく聞くこととして,警察に被害届を出したことで自分の意思はきちんと伝えたと思っていたのに,まだ告訴状というものが実は必要だったということを知って,ショックを受ける,負担を感じるということがあります」(第8回斎藤委員、9頁)

第3 性犯罪に関する公訴時効の撤廃又は停止について
【要望事項】

特に未成年者が被害者である性犯罪について,公訴時効を撤廃すべきである。もしくは、きちんと性暴力であると認識できるまで、少なくとも成人するまでは公訴時効が進行しないこととすべきである。
子どもは自分に起きていることが性暴力だとすぐに理解できないことも多い。また、性暴力と認識しても、加害者に対する恐怖や母親やきょうだいを苦しめたくないと考えるなどして誰にも相談できなかったり、近親姦の場合は家を出て1人で生活することもできず、加害者を訴えたいと思っても訴えることができず、耐え続けるしかないということもある。被害者は、自分を汚れた存在だと思ってしまったり、対人関係に問題を抱え、自殺念慮、うつやPTSDの症状などで就労もままならないことも多い。精神科受診やカウンセリングによって性暴力被害の影響であったとわかるまで何十年も経っていることも珍しくない。

【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
○年少者のケースの特殊性に配慮する必要性について

・諸外国の立法例を見ても公訴時効の停止がほとんど行われていることや、「子供に対する性虐待,性暴力行為というのは,非常に重大な犯罪であるという,そういう認識,メッセージを社会に対して送るということは非常に大事だ」(第8回角田委員、15頁)
・「公訴時効を停止して,そして子供に対する性暴力事犯というのは,後になっても追及されるということを,社会にはっきりと宣言しておく必要がある」(第8回角田委員、15頁)
・「年少者のケースについて,被害者側が親や近親者等といった特殊な関係において,被害をすぐに申告できないようなケースのときに,特にこうした時効の停止であるとか,一定の年齢までには起訴することができるというような制度を作る必要性が多少まだ残っているのではないか」(第8回北川委員、18頁)
・「子供が近親者から被害を受けたときに,その被害を訴える相手がいなくて,しかも近親者間という人間関係がずっと続く中で,すぐに被害を訴えたり,一定の年齢に達したからといって直ちに訴え出ることも難しいということなので,被害申告に非常に時間のかかる特殊な類型の犯罪であるということに配慮する必要性があるのではないか」(第8回北川委員、18頁)

第4 刑法における性犯罪に関する規定の位置について
【要望事項】

強姦罪の条文の位置は殺人の次に置くことを検討すべきである。強姦罪の保護法益について個人的法益である性的自由と説明されているが、現行の条文の位置は社会的法益の位置にあり矛盾している。1992年フランス刑法では「人の身体的・精神的完全性」という規定になっており、女性への暴力防止と法整備に関する「国連ハンドブック」の定義でも性暴力は「身体の統合性(physical integrity)と性的自己決定を侵害するもの」と規定され、生命の次に重要である「身体」が法益となっている。
【取りまとめの報告書に盛り込むべき内容】
「(強姦罪は)殺人の罪の次のグループに入れて規定すべきではないかと思っているのです。これで行くと,第26章が殺人で,第27章が傷害となっているので,どちらに入れるかということではないのですけれども,殺人とか傷害とか,人の心身の尊厳に対する罪というふうに強姦罪を捉え直すならば,その辺りに入るべきではないか」(第7回角田委員、18頁)

以上
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【2015/09/22 23:11】 | 声明・提言
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性暴力禁止法をつくろうネットワークでは、毎年、予算要望を行っています。
今年は、9月初旬に内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省に運営委員が持参して、趣旨説明を行いました。
また、文部科学省には郵送しました。以下に賛同団体名を掲載しています。今回は募集期間が大変短い中、36団体の賛同がありました。ありがとうございます。
予算要望を行う日程としてはもう少し早く行う方が効果的であるという助言もありましたので、来春に2017年度予算の要望活動ができればと考えております。
「女性に対する暴力を根絶するための施策」の予算化を実現させるために継続して働きかけていきたいと思います。

【賛同36団体】
NPO法人全国女性シェルターネット、NPO法人DV防止ながさき、NPO法人さんかくナビ、女性グループ翼(ウィング)、SARTいばらき、NPO法人SSHP全国ネットワーク、NPO法人博多ウィメンズカウンセリング、性暴力を許さない女の会、セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる、ウィメンズカウンセリング京都、パープル・ユニオン、フェミニストセラピィ”なかま”、認定NPO法人 サバイバルネット・ライフ、NPO法人アーシャ、特定非営利活動法人 アウンジャ、W・Sひょうご、NPO法人女のスペース・ながおか、スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク、NPO法人ハーティ仙台、NPO法人フェミニストカウンセリング東京、一般社団法人 女性相談ネット埼玉、北海道ウイメンズ・ユニオン、NPO法人女のスペース・おん、認定NPO法人 ウイメンズハウスとちぎ、ふぇみん大阪、特定非営利活動法人アジア女性資料センター、NPO法人ひこばえ、かけこみ女性センターあいち、NPO法人SEAN、フェミニストカウンセリング堺、NPO法人 性暴力救援センター・大阪SACHICO、ウィメンズセンター大阪、北京JAC (世界女性会議ロビイングネットワーク)、女のサポートライン、AWS・ムーンストーン、特定非営利活動法人性暴力救援センター・東京

                                  2015年9月4日
内閣総理大臣
安倍 晋三 様
法務大臣
上川  陽子 様
厚生労働大臣
塩崎 恭久 様
内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)
有村 治子 様
文部科学大臣
下村 博文 様
警察庁長官
金高 雅仁 様

「女性に対する暴力」の根絶に向けた施策に関する予算の要望書
 
日頃から女性に対する暴力の根絶のためにご尽力いただき心から感謝申し上げます。
平成22年12月17日に閣議決定された「第3次男女共同参画基本計画」に基づき、女性に対する暴力の根絶に向けた施策が推進されてきました。現在、パブリックコメント中の「第4次男女共同参画基本計画」の中でも、女性に対する暴力は、犯罪となる行為も含む重大な人権侵害であり、その予防と被害からの回復のための取組を推進し、暴力根絶を図ることは国の責務であるとされています。
平成28年度の予算の策定に際し、第3次計画、第4次計画に沿った施策の実現に向けて、下記の通り要望いたします。女性に対する暴力被害の根絶に向けて、より一層のご尽力をお願いいたします。

                     記

1.性暴力被害者に切れ目のない支援を提供できる機関の設置推進について

・性暴力被害者に切れ目のない支援を提供できる機関を都道府県に最低1か所設置、運営するための予算措置を行うこと。被害者への二次被害を加えないために、ジェンダー平等の視点に立った運用をすること。被害者支援の拠点の運営や24時間の電話相談及び当事者への付き添いや生活支援等について、実績のある民間女性団体への委託・協働を行い、民間団体への財政的支援を充実させること。(内閣府、厚生労働省)
・24時間の電話相談を全国で実施できるような予算措置を行うこと(内閣府、厚生労働省)
・大阪府において、性暴力の被害者から採取した証拠を拠点病院内の救援センターで保存し、後で被害者が希望した場合には、証拠物として警察に提出できることを制度化しているが、同様の制度を各自治体に広げるための予算措置を行うこと(警察庁、法務省、厚生労働省)
・性暴力被害者に対応できる医療機関が増加するよう、診療報酬体系の見直しを含む対策強化に向けた調査や検討会設置の予算を盛り込むこと。(厚生労働省)
・医療機関に被害女性に付き添う女性支援者を民間支援団体から選定して配置するまたは、支援者を招請できるシステムを構築することとし、人件費等を予算化すること
・すべての救急外来にレイプキットを設置し、医療機関において性暴力被害者への対応ができるように医師、看護師、助産師など専門家の養成・研修を行うための予算を盛り込むこと。(厚生労働省)

2.性暴力事件の捜査・裁判における被害者支援について

・警察の性犯罪被害者支援制度における医療費の公費支出制度、診察料、性感染症検査費用、緊急避妊薬費用、診断書料、中絶手術費用、カウンセリング費用等の対象の範囲を拡充すること。(警察庁)
・性犯罪被害者が安全な場所で生活できるための施策の予算を拡充するとともに、都道府県をまたがって利用できるようにすること。(警察庁)
・女性警察官の増員や女性警察官が24時間対応する交番の整備をさらに進めること。(警察庁)
・性暴力事件の捜査段階から支援員や弁護士が被害者に付き添うためのモデル事業を行うための予算を盛り込むこと。(法務省、警察庁)
・性暴力事件の捜査・裁判における適切な証拠の採取と保全が推進されるように、警察官や医療機関が証拠の採取・保全を行うためのマニュアルの周知、人材養成の予算を盛り込むこと。また、DNA鑑定費用等の拡充をはかるために予算を増額すること。(警察庁、法務省、厚生労働省)
・性犯罪被害者、特に被害児童、障害をもった被害者への事情聴取において、担当する警察官や検察官が専門の技法を習得できる研修のための予算を盛り込むこと。(警察庁)
・性暴力被害者に関わる警察官、検察官、裁判官に対して、性暴力問題の研修を充実するための予算措置を行うこと。例えば、講師として性暴力被害の当事者・支援者を登用する、また実績のある民間支援団体等を活用すること。また、研修等の実施にあたっては、女性支援に関わる民間団体が実施する研修を積極的に活用することとし、補助事業等として位置づけるなど、支援団体の活動の安定化を図ること。特に二次被害の予防に向けた研修は必須事業とすること。(警察庁、最高検察庁、最高裁判所、法務省)

3.性暴力被害者の心理的負担に配慮した詳細な全国実態調査の予算を盛り込むこと。(法務省、内閣府)

4.男女共同参画センターの相談員等を対象とした性暴力被害者支援のための研修の開催地や回数を拡充すること。また、民間の性暴力被害者支援のための人材養成・研修のための予算措置をさらに継続すること。(内閣府)

5.配偶者暴力防止等に関する民間団体の活動支援について民間団体のニーズに即した支援事業を行うための予算措置を行うこと。(厚生労働省、内閣府)

6.DV・ストーカー殺人を防止するための専門性の高い民間の支援団体やワンストップ支援センターなど警察以外の相談窓口との連携をはかり、被害者の安全を最優先する対策を行うこと。早期被害者支援団体の中にDV・ストーカー・性暴力被害者に特化した支援団体の認定枠を設けること。(警察庁)

7.セクシュアルハラスメントの防止について(厚生労働省、文部科学省)

・セクシュアルハラスメント被害についての全国的な実態調査を行うこと。
・セクハラ労災の申請受付状況及び認定率、ならびに却下理由などの情報を開示すること。
・セクハラ労災の基準改定の趣旨に沿ったマニュアルの作成及び窓口、認定担当者の研修を実施し、基準改定を厳守した運用を行うこと。
・学校現場におけるセクシュアルハラスメントを防ぐために、予防教育のモデル事業を予算化すること。
・学校現場におけるセクシュアルハラスメントについて、加害教員の再加害を防ぐための取組みに予算をつけること

8.法学部、法科大学院、司法研修所等で性暴力の実態や被害者心理等を学ぶカリキュラムを盛り込むための予算措置を行うこと(文科省、法務省)

9.性暴力被害者及び子どもを対象に中長期的に支援するための「性暴力被害者回復支援センター(仮称)」の設置に向けたモデル事業の予算措置を行うこと。(内閣府、厚生労働省)


参考:要望の背景

1.平成24年8月1日に男女共同参画会議で決定された内閣府男女共同参画局「女性に対する暴力に関する専門調査会」の報告書『「女性に対する暴力」を根絶するための課題と対策~性犯罪への対策の推進~』において、第3次計画の実現に向けた、より具体的な施策が提言されている。
性暴力被害者に切れ目のない支援を提供できる機関の設置に関しては、特に、性犯罪被害者支援に知見のある民間女性団体への運営の委託が最も効果的である。すでに現在稼働している民間の機関には多くの実績がある。
2010年に開設した性暴力救援センター・大阪(SACHICO)は、開設5年間で電話件数が23039件、来所延べ件数が3202件、初診人数963人、(うちレイプ・強制わいせつ577人、性虐待213人)もの相談があった。2012年に開設した性暴力救援センター・東京(SARC東京)も3年間で電話相談は10000件を越え、名前を名乗っての相談実人数はおよそ1000人であり、そのうちの3割が来所し、その件数は518件であった。この実績をみれば、拠点病院と民間の女性団体が協力して運営することが有効であることは明らかである。
2015年4月現在で、大阪、愛知、東京、佐賀、兵庫、和歌山、島根、滋賀、福井、千葉、名古屋(準備中)、北海道、福島、富山、岡山(2グループ)、福岡(2グループ)、鳥取、沖縄、広島、大分、岐阜、京都、群馬、埼玉、三重、長野など25自治体で様々な形態のワンストップ支援センターが開設・準備されているが、国連社会経済局女性の地位向上部の「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」において、女性20万人に1カ所のレイプ・クライシス・センターの設置が目標とされていることからすると、設置数はおよそ足らないと言わざるを得ない。また、現在設置されているセンターのうち民間によって運営されている場合は、設置・運営費用はボランティアによるものがほとんどであり、長期的に運営を維持するためには公的な資金援助が不可欠となっている。
警察や犯罪被害者支援センターなどが中心となって運営されている場合は、警察に訴えることが前提になっているように受け取られる場合も多く、被害者が相談につながりにくい。また犯罪被害者全般の支援経験だけでは、性犯罪被害者の心理への配慮が十分ではなく、二次被害の危険性もある。これまで性暴力被害者の相談支援に実績のある機関による対応が重要である。
内閣府では平成26年度に3千9百万円の予算で性犯罪被害者等のための総合支援モデル事業として「性犯罪被害者等のための総合支援に関する実証的調査研究」を行い、9か所の地方公共団体の事業計画が採択されている。しかし、この調査事業を受託した事業者が、性暴力被害者支援の実績が必ずしも豊富ではない事業者であったため、調査研究の分析が必ずしも効果的に行われているとは言えないと聞く。性暴力・性犯罪被害者支援施策の今後の提言につながる重要な事業であるため、実際に調査分析を行う事業者の選定の条件に「特に」性暴力・性犯罪被害者支援や支援大体との連携の実績を重視したものにする必要がある。この事業は平成27年度には、予算規模が1億円に拡大され、都道府県における取り組みを推進しているが、さらにこれを発展させ、都道府県の取り組みを加速化させる必要がある。この事業は地方公共団体を主な対象としているが、民間女性支援団体との連携強化のために、調査報告書を取りまとめるにあたっては、民間女性支援団体の見解を掲載することも重要と考える。また、特に24時間のホットラインが実現できるように、相談員の人件費などを予算化するとともに、センターの運営を行う費用の補助を行う必要がある。これらの費用は地方公共団体や民間団体にとっては大きな負担であるため、実現のためには国による補助が不可欠である。
 7月26日付の読売新聞などの報道によれば、「性暴力を受けた女性から採取した加害者の体液などを、将来、被害届を出す時に備えて支援団体に保存してもらう制度を、大阪府が今月から始めた。証拠物を警察以外で管理する制度を整えた自治体は全国初。 府内の協力病院を被害者が受診した場合、警察には届けない意思を本人が示していても、同意を得て体液や毛髪を採取し、阪南中央病院(大阪府松原市)にあるNPO法人「性暴力救援センター・大阪」(通称SACHICO)が一括保管する。後で被害者が告訴などを希望した時、証拠物として警察に提出できる。保管方法は大阪府警と協議してマニュアル化した。現在、4病院が協力しており、府はさらに増やす方針。証拠物の採取と保管には金銭負担は発生しない」とのことである。SACHICO代表の産婦人科医、加藤治子さんは「時間がたち、精神的に落ち着いてから届け出る例に対応できる仕組みが全国に広がってほしい」とのことである。(2015年7月26日 読売新聞)
平成27年度男女共同参画白書の「第3節性犯罪への対策の推進、性犯罪への厳正な対処等」に、「性犯罪の被害者が警察へ届け出ずに医療機関を受診した場合,後に警察に届出をするときには身体等に付着した証拠資料が滅失している可能性があることから,医師等が受診時にこれを採取するための資機材を5都道県の医療機関に試行整備している」とある。
被害直後には、被害をなかったことにしたい、事件を思い出したくないなどと警察に訴えることを拒否していた被害者が、後で加害者につきまとわれて恐怖を感じたり、精神的に落ち着いてきてから相手を許せないという気持ちが強くなってきて、やはり訴えようと決断することは考えられる。しかし、警察に訴えて加害者を処罰してもらう場合に、客観的な証拠がなければ立証が難しいとして、立件されなかったり無罪判決が出されてしまう可能性が高い。直後に受診した医療機関で採取された証拠物を警察以外で管理する制度が広がれば、後になってから訴えようと思う被害者が増え、性暴力の顕在化を推進することになる。
 急性期の性暴力被害者を支援するための性暴力救援センター、ワンストップ支援センターは、設備や特別の配慮が行われる医療機関に設置されることが望ましいが、設置・運営に伴う負担が大きいため、医療機関が敬遠する傾向がある。
また、配偶者から暴力を受けている妻が、望まない妊娠をして人工妊娠中絶手術を受ける場合であっても、現行の母体保護法の規定では配偶者の「同意」が必要となっている。そのため、手術を引き受けてくれる医療機関が限られていたり、医療機関を探している間に心身ともに負担の大きい中期中絶を余儀なくされたり、場合によっては出産せざるを得なくなり暴力をふるう夫の元に止まらざるを得なくなる例も少なくない。母体保護法の改正が検討されるべきであり、少なくとも夫からのDVがある状況での妊娠の場合や、夫以外の者からの性暴力による妊娠の場合には、本人の同意だけで足りるという通達を出すなどの対応が行われる必要がある。これについては、平成24年8月1日に男女共同参画会議で決定された内閣府男女共同参画局「女性に対する暴力に関する専門調査会」の報告書『「女性に対する暴力」を根絶するための課題と対策~性犯罪への対策の推進~』においても、「性犯罪被害者の人工妊娠中絶に係る同意の在り方などについて、第3次計画に基づき関連する男女共同参画施策の取組が測られることが求められる」と言及されている。

2.平成27年度男女共同参画白書の第10章女性に対するあらゆる暴力の根絶、第1節 女性に対する暴力の予防と根絶のための基盤づくり2 相談しやすい体制等の整備、(1)相談・カウンセリング対策等の充実」に「性犯罪被害110番」,全国統一番号の警察相談専用電話「#9110」番や各都道府県警察に設置している各種相談窓口の整備・充実を推進するとともに,女性相談交番の指定や鉄道警察隊における女性被害者相談所の設置を行っている」とあるが、性犯罪被害110番に電話した場合に、必ずしも女性警察官が電話に出なかったり、その場合の対応も親切ではなかったという話も聞く。
また,第3節 性犯罪への対策の推進 2 被害者への支援・配慮等には「性犯罪の被害女性に対し,その被害に係る初診料,診断書料,緊急避妊措置費用,検査費用等を公費で支給することとし,その経済的負担の軽減に努めているほか,性犯罪被害者に対する治療,カウンセリング,法律相談等の各種支援とともに証拠採取,事情聴取等の捜査を一つの場所で一度に行う「性犯罪被害者対応拠点モデル事業」(平成22年度実施)の効果,運営課題等について行った検証結果等を踏まえつつ,関係機関・団体と連携を図りながら,性犯罪被害者のニーズを十分考慮した対応に取り組んでいる」とあり、支援策が拡大・充実されている点は評価できる。
特に、自宅で被害にあった場合に、自宅に住めなくなることも珍しくなく、シェルターやホテルの宿泊費の保証などがあると、被害者の回復に大きく寄与する。また、公営住宅に被害者枠などを設定している場合もあるが、自治体をまたがると公費負担制度が利用できないという問題がある。性暴力被害者は加害者への恐怖や被害のトラウマによる回避症状などで、遠方への引っ越しを余儀なくされる場合も少なくない。警察の犯罪被害者支援制度について、自治体間の連携によって制度を引き継げるような措置を検討すべきである。
若年の被害者や知的障がいの被害者などは、被暗示性が強く、面接者の態度や声の調子などに影響されたり、何回も同じ質問をされると、自分が信用されていないと思って発言内容を変えてしまうこともある。最近でも、子どもの証言が誘導された可能性があるとして、無罪判決が言い渡された例もある。訓練を受けた専門の面接者が事情聴取を行ったり、聴取の様子を録画・録音しておくことにより、被害者の証言の信用性を高めることで、公正な判断が下される必要がある。警察官、検察官に対して、司法面接の研修を受ける費用を予算化することが必要である。
また、2013年に制定された「障害者差別解消法」においては、社会的な障壁を取り除くための合理的な配慮提供の義務化が明文化されている。
内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(平成26年)において「異性から無理やりに性交された経験がある」女性のうち警察に訴えたのは4.3%で、前回調査の3.7%からは微増したが、依然としてわずかである。性犯罪被害者が警察に届け出ることは大きな抵抗があることは明らかである。また、内閣府が行った「性犯罪被害者からの被害後の二次被害等に関する聞き取り調査」において「助けてくれるというより、自分たちの質問に答えろ、という態度だった」など刑事手続きでの二次被害も報告されていることもあり、警察官への研修及び捜査段階から支援員や弁護士などの同行支援が必要である。
性暴力裁判において客観的な証拠がないということで無罪判決が出される事例も少なくない。性犯罪の捜査時にDNA鑑定を行うなど証拠採取における予算の増額が必要である。
内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(平成23年)において「異性から無理やりに性交された経験がある」女性のうち警察に訴えたのはわずか3.7%。性犯罪被害者が警察に届け出ることは大きな抵抗があることが分かっている。また、内閣府が行った「性犯罪被害者からの被害後の二次被害等に関する聞き取り調査」において「助けてくれるというより、自分たちの質問に答えろ、という態度だった」など刑事手続きでの二次被害も報告されていることもあり、警察官への研修及び捜査段階から支援員や弁護士などの同行支援が必要である。
平成25年5月に「警察における女性の視点を一層反映した対策の推進に関する検討会」がまとめた報告書においても、第3 女性被害者等への対応強化 2 夜間・休日を含めて女性警察官が必要とされる場合に対応できる警察へ (1)夜間・休日を含めて女性警察官による対応が必要な場合に対応可能な体制の整備 の項目で、「必要とされているのは、個別の相談や事案に応じて、女性被害者等の対応のために女性警察官が必要とされる場合に、夜間・休日を含めて女性警察官が対応できる、駆けつけられる体制を整備することである」と提言されている。また、6月の新聞報道によれば、京都府警は女性警察官が24時間対応する「平成なでしこ交番」の整備を進めている。それによると、府内にある193交番のうち、女性警察官用の待機室やトイレが整備されているのは20交番。そのうち、実際に女性警察官が勤務しているのは13交番にとどまり、多くの交番では、女性警察官は、夜間になると休憩時には警察署に戻っている。一方で、府警が4~5月に取った府民約450人を対象としたアンケートでは、83・4%が「交番に女性警察官がいた方がよい」と回答。また、強姦や強制わいせつ事件の約8割で、午後8時~午前6時までに通報を受理していることなどから、女性警察官が夜間でも勤務可能な交番を増やすことが急務と判断したということである。こうした取り組みを全国で広げる必要がある。

3.ここ数年、性犯罪裁判において被害者が十分に抵抗していなかったなど被害者の行動が一般的な被害者のイメージにそぐわないという「経験則」によって判断され無罪判決が出される事例が目立っている。それは、実際の被害者像を司法関係者等が把握できていないことが原因であると考えられる。性暴力被害者の心理的負担を十分配慮した上での詳細な実態調査が求められている。また、内閣府が3年に1回実施している男女間の暴力に関する調査において、性暴力被害の実態をより把握するための調査項目を充実することも必要であるが、平成26年に行われた調査では、「異性から無理矢理性交された経験がある」かどうかについては、質問項目が減らされていた。また、経年比較の数値は示されているが、それに対する分析はなされておらず、実態調査として効果に疑問が残る。

4.内閣府で行っている、男女共同参画センターの相談員等を対象とした研修は、引き続き開催地や回数を増やして、全国の相談員等が十分に受講できるようにすべきである。民間の支援団体も含めて幅広く性暴力被害者支援のための人材養成、研修のための予算の増額が重要である。

5.平成27年度に、厚生労働省がDV被害の他、ストーカー被害、性暴力等の被害女性を対象とするDV被害者等自立生活援助モデル事業として児童虐待・DV対策等総合支援事業に47億3千万円の予算をつけているが、周知が必ずしも十分とは言えず、また民間団体の運営費への補助など民間団体のニーズに沿った事業の実施が必要である。
6.2013年にDV法、ストーカー規制法の改正が行われたにも関わらず、DV・ストーカーによる殺人事件が後を絶たない。被害者の心理状態を理解したきめ細かい対応が必要である。そのためには、被害者支援の経験豊富な民間の女性団体との連携が不可欠といえる。
 先述の『警察における女性の視点を一層反映した対策の推進に関する報告書』においても、第3 女性被害者等への対応強化 1 女性被害者・相談者が相談・届出しやすい警察へ (3) 民間団体・関係機関との連携の促進 にも、「女性や子どもが被害者となりやすい事案について、いつでも相談できる場所は必要であるが、これは警察のみが対応体制を整備すれば解決する問題ではない。より一層女性被害者等のニーズに沿った対応を可能とするため、警察外のパワーの活用、例えば性犯罪被害者のためのワンストップ支援センターや配偶者暴力相談センターなどの民間団体や関係機関との連携も重要である」と指摘されている。
日本司法支援センター(法テラス)の業務のあり方などについて、平成26年6月11日に公表された『充実した総合法律支援を実施するための方策についての有識者検討会報告書』において、「被害が深刻化した段階はもちろんのこと,比較的解決しやすい初期段階において法律専門家が適切に介入できる制度設計が必要であり,被害が軽微な段階でも,これら犯罪被害者がちゅうちょなく弁護士にアクセスできるようにする必要があり,この観点から,弁護士へのアクセスの入口となる法律相談については,資力を問わないものとするべきである。」「DV・ストーカー等被害に対応できる精通弁護士を全国にまんべんなく確保することが必要である」と提言されている。このような法テラスとの連携も重要である。

7.平成22年に日本で初めて提訴されたセクハラ労災行政訴訟は、国が労災を認めたことにより原告の佐藤香さんが訴訟を取り下げたが、休業補償給付の支給が一部しか認められなかったため、平成24年、25年に不支給決定の変更を求める裁判が提起されていた。平成27年3月に札幌地裁は原告の主張を認めて不支給の処分取り消しを言い渡し、6月に国側が支給を決定している。これはセクハラで受けた深刻なストレスからは簡単に回復するものではないと理解された点で評価できる。また、この行政訴訟提起がきっかけとなり、2011年に厚生労働省が精神障害の新たな認定基準が定められている。ところが、必ずしもセクハラ労災の認定が増加したとはいえず、認定割合は申請の半数程度である。また、申請手続きの過程で、セクハラ被害に対する無理解による二次被害や不支給などにつながっている可能性がある。平成27年度男女共同参画白書のセクシュアルハラスメントのデータは雇用均等室への相談件数のみ掲載されているが、セクハラ労災の申請及び認定件数も掲載すべきである。さらに、セクシュアルハラスメントや労災に関する実態が必ずしも把握されているとは言えないので、より実態に即した実効性のある対策を講じるためにも、実態調査をきちんと行い、労災の利用拡大が重要である。
学校現場におけるセクシュアルハラスメントの深刻な実態は明らかになっているが、防止策は十分とは言えない。どのような予防教育が効果があるかなどを検討するためのモデル事業に予算をつけていただきたい。
学校現場におけるセクシュアルハラスメントにおいて、加害教員が軽い処分で異動になったり、公立学校を辞めて私立学校に移るなどによって異動先の教育機関で再度加害行為を繰り返す例は少なくない。そういった再加害が防ぐための予算化が必要である。

8.法学部、法科大学院、司法研修所等などで性暴力の実態や被害者心理等を学ぶカリキュラムが必修化されておらず、意識のある人しか受講しないという実態がある。それは司法試験に刑法強姦罪など性犯罪に関する出題がされないこともあると思われる。被害者の人生を左右される判決が性暴力の実態を知らない法曹関係者によって判断されることは、大きなリスクを負わされているということである。

9.性暴力被害は長期にわたって、心理面、生活面に深刻な影響を与える。婦人保護施設の利用者には、性虐待・性暴力の被害者が多いという調査報告もある。BONDプロジェクトが行った「10代20代の女の子の生と性に関する調査報告書」によれば、10代20代の女の子の3人に1人は、性暴力被害にあっていて、性暴力被害にあった10代20代の女の子の2人に1人は、死にたいと感じているという調査結果が出ている。このような被害者を中長期的に総合的な支援を提供する制度が必要である。
以上

【賛同36団体】
NPO法人全国女性シェルターネット、NPO法人DV防止ながさき、NPO法人さんかくナビ、女性グループ翼(ウィング)、SARTいばらき、NPO法人SSHP全国ネットワーク、NPO法人博多ウィメンズカウンセリング、性暴力を許さない女の会、セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる、ウィメンズカウンセリング京都、パープル・ユニオン、フェミニストセラピィ”なかま”、認定NPO法人 サバイバルネット・ライフ、NPO法人アーシャ、特定非営利活動法人 アウンジャ、W・Sひょうご、NPO法人女のスペース・ながおか、スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク、NPO法人ハーティ仙台、NPO法人フェミニストカウンセリング東京、一般社団法人 女性相談ネット埼玉、北海道ウイメンズ・ユニオン、NPO法人女のスペース・おん、認定NPO法人 ウイメンズハウスとちぎ、ふぇみん大阪、特定非営利活動法人アジア女性資料センター、NPO法人ひこばえ、かけこみ女性センターあいち、NPO法人SEAN、フェミニストカウンセリング堺、NPO法人 性暴力救援センター・大阪SACHICO、ウィメンズセンター大阪、北京JAC (世界女性会議ロビイングネットワーク)、女のサポートライン、AWS・ムーンストーン、特定非営利活動法人性暴力救援センター・東京



【2015/09/21 11:10】 | 声明・提言
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ご存知の方も多いと思いますが、第4次男女共同参画基本計画の素案に対する
パブリックコメントの締切りが14日(月)に迫っています。
終了しました。ご協力ありがとうございました!
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_sakutei/yojikeikaku/ikenboshu.html

これから5年間の国の男女共同参画施策の元になる計画です。
第3次よりも後退している内容と言われていますが
少しでも状況を変えていけるように、現場の声を伝えていきましょう。

ここでは計画の中でも特に「女性に対する暴力」の分野に
絞ってお知らせしますのでご了承ください。

●第4次計画の素案は以下のアドレスからダウンロードできます。
暴力の分野は「Ⅱ 安全・安心な暮らしの実現」の「7 女性に対するあらゆる暴力の根絶」です。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_sakutei/yojikeikaku/pdf/ikenboshu_honbun.pdf

暴力の分野だけのダウンロードは下記からできます。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_sakutei/yojikeikaku/pdf/master_02-7.pdf

●意見をメールで送る場合は以下のフォームから送ってください。
https://form.cao.go.jp/gender/opinion-0168.html

●郵送やFAXで送る場合は以下からダウンロードできます。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_sakutei/yojikeikaku/pdf/ikenboshu_yoshiki.pdf

[締 切]平成27年9月14日(月)(郵送の場合は締切日消印有効)
[送付先]内閣府男女共同参画局 意見募集担当宛
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
FAX 03-3592-0408

メールでの送信は1000字以内なので、
全部書ききれない場合は何度かに分けて送る必要があります。

できるだけたくさんの意見を寄せた方がいいと思いますので
時間がありませんが、皆さまどうぞよろしくお願いします。

意見の案としては添付のコメントもご参照ください。

また例として下記にいくつか挙げておきます。
現場の実態などを合わせて書くと説得力があるのではないかと思います。

○性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設置の数値目標を挙げてほしい。
○ワンストップセンターの設置を広げるために性暴力被害者支援法など根拠法が必要である。
○24時間のホットラインを国の予算で置くべき。
○DV・性暴力被害者は、夫の同意書がなくても中絶できるように制度化すべき。
○警察に(すぐに)届けたくない強かん被害者の証拠採取や保管について
医療機関やワンストップセンターでの取り扱いについて地域格差のないように整備すること。
○法務省の「性犯罪の罰則に関する検討会」が検討した刑法強姦罪の見直しの各論点について、性暴力被害実態に即した見直しを実現すること。
○子どもや障がい者が被害にあった場合に、多業種で一度に聞き取りをするフォレンジック面接(司法面接)について
関係機関の必要な職員がすべて研修を受けられるようにすること。
○フォレンジック面接の様子を録音録画したものが裁判の証拠として採用できるような法制度整備を行うこと。
○性暴力被害者が裁判で二次被害に遭わないようにレイプシールド法を実現してほしい。
○裁判所にDV・性暴力を専門に取り扱う部署を設置するモデル事業を行うこと。
○DV・性暴力被害者へのジェンダーの視点を持ったカウンセリングに対する公費負担を制度化すること。
○子どもや若い女性の生活支援や性暴力被害からの回復まで長期的に支援する性暴力被害者回復支援センターを設置すること。
○性暴力被害の実態を明らかにして実効性ある施策につながるような全国的な調査を実施すること。
○学校教育において教員が異動先で転々と再加害を繰り返すことを防ぐための施策を行うこと。
○セクシュアルハラスメントや労災認定についての実態を明らかにする調査を行うこと
○セクシュアルハラスメントの加害者を処罰する規定を置くこと。

※もっともっと盛り込んでほしい内容があると思います。

現場からの声を少しでもたくさん届けましょう!

【2015/09/12 23:11】 | 終了したイベント
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