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皆さま

日本弁護士連合会に以下の要望書を送付しました。
41団体が賛同してくださいました。
賛同団体は末尾にありますのでご参照ください。
刑法強姦罪の改正実現に向け引き続きご協力よろしくお願いします。

性暴力禁止法をつくろうネットワーク

*****

2016年6月29日

日本弁護士連合会会長
中本 和洋 様

被害の実態に即した刑法強姦罪の見直しに向けた要望書


日頃から女性に対する暴力の根絶のためにご尽力いただきありがとうございます。
「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」は、被害者、支援者、弁護士、研究者など様々な立場から性暴力に関する包括的な法整備を求めて活動している全国組織です。
平成28年6月16日の法制審議会刑事法部会において、刑法強姦罪等改正の要綱案がまとめられたことが発表されました。今後は9月の法制審議会総会を経て、来年の通常国会に改正案を提出する方向とのことです。改正案の要綱は、必ずしも性犯罪・性暴力被害者、支援者の声を十分に反映したものとは言えませんが、不十分な内容であっても、100年以上改正されてこなかった刑法強姦罪等の見直しが実現されることは、私たちにとって大きな希望です。
しかし、私たちは、貴会が刑法強姦罪等の見直しに対して反対の立場を取られるのではないかと危惧しています。貴会を代表して法制審議会の委員をしている2名の委員のうち、1名は被害者支援の立場から発言されていますが、1名は刑事弁護の立場から今回の見直しに反対の立場を強く打ち出しているからです。
後者の委員が、冤罪を重大な人権侵害ということで、人権擁護の立場から発言されている趣旨は理解できますが、最近の性暴力被害者の支援現場では、被害者が警察に被害申告したとしても、性交されたことや抵抗したという客観的な証拠がなければほとんど事件化されない現実があります。捜査機関の適切な捜査によって冤罪を防ぐことが重要であることは言うまでもありませんが、法改正を必要以上に冤罪と結びつけることは、性犯罪・性暴力の被害の現実を無視し、いたずらに改正に反対するものです。
弁護士の立場からは、刑事手続きにおいて被疑者・被告人の人権を守るという役割があることは理解していますが、一方で被害者の権利を擁護するのも弁護士の大切な役割の一つではないでしょうか。被害者の状況を加害者に理解させ、反省や更生につなげるのも重要な役割と考えます。全国的な組織である貴会が全国の性暴力被害者、支援者などの信頼を失うことのないよう、公正な立場を貫いていただくことを望みます。
私たちは、以下のように、法改正が必要であると考えています。貴会におかれましても、性暴力被害の実態に即した刑法強姦罪等の見直しの実現に向けて、ご尽力いただきますよう要望いたします。

                 記

1 強姦罪に性交類似行為として肛門性交や口淫行為も含めるべきである

第5回(5月25日)の法制審議会においてヒアリングが行われたが、そのうちの一人である山本潤さんは性暴力について被害当事者の立場から「私たちから見えるのは、豹変して襲い掛かってきた相手の顔つき、顔にかかる生臭い息、押さえつけられて動かないからだ、突然、自分の運命が予測不可能な状態に置かれてしまった恐怖です。それは人間ではない、モノとして扱われる恐怖です。(中略)そういった、人間を性的なモノとして扱うということを(中略)構成要件に入れる必要があるのではないでしょうか」(「性暴力と刑法を考える当事者の会」のHP「活動報告」掲載のヒアリング原稿及び資料より。以下、山本さんの発言はこのHPより引用)と述べている。肛門性交も口淫行為も「性的なモノとして扱われる」という意味では同程度の恐怖を受けるものといえる。
口淫行為の被害によって、モノが食べられなくなる、口が開けられなくなるなどの後遺症が起こり、日常生活が著しく困難になっている被害者は少なくない。口淫行為の被害によって、深刻な後遺症に悩まされても、強姦罪が膣性交に限定されているために「強姦されていないのだからそれほど深刻な被害ではないはずなのに、なぜ自分は立ち直れないのだろう」と自分を責めている被害者もいる。また、ある例では、加害者から膣性交か口淫行為かどちらか選べと脅されて、口淫行為は絶対嫌だからやむなく膣性交と答えた、という例もある。それほど口淫行為が被害者にとっては苦痛を伴い、何としても避けたい行為であることも現実なのである。
最近の産婦人科医療の現場では、妊娠させることを避けて、口淫行為をさせる例も少なくなく、それが原因での口腔内の性感染症が広がっているという実態がある。口淫行為の強要は膣性交や肛門性交と同様の被害の深刻度があり、仮に後者が低いと考えているとしたら被害の実態と乖離している。
また、今回の改正案の要綱では、強姦罪の行為者及び被害者いずれも性差のないものにされている。それなのに、肛門性交や口淫行為を膣性交よりも被害の程度が軽いとすることは矛盾しているのではないか。

2 法定刑の引き上げについて

私たちは、これまで強姦罪の法定刑が性犯罪の深刻さを十分に反映してこなかったことに対して、その是正を求めているだけである。観念的な法律論だけで判断されるとしたら、被害当事者や支援者は強い違和感を抱かざるをえない。先述の山本さんは「加害者は刑務所に入るけれど、被害者は自由だと言われることもあります。でも、自由ではありません。人に脅え、物音に脅え、学校にも行けず、働くこともできず食事も食べられず、眠れなくなる。そういう被害者がたくさんいます。こういう甚大な被害を受けているのだから、法定刑は5年以上の有期懲役に引き上げてくださることを望みます」と述べている。

3 監護者による性侵害に対する処罰について

先述の山本潤さんは、父親からの性的虐待を受けることがどのようなことなのか、次のように語っている。「『話したらひどい目にあうよ』『家族がバラバラになるよ』と脅す加害者もいますが、私の加害者はそうではありませんでした。私に起こった事は、黙って入ってきて、黙って触られ、これから何が始まるのかも、何が起こっているかも、理解できない混乱する経験でした。怖い気持ちが強すぎて、私は抵抗することすらできませんでした」「強要されているという事は、選択の権利がないということです。私は彼を押しのけて、叩きのめして、家から追い出してやりたかった。でも、それはできなかった。(中略)些細な強要でも抵抗できなくさせることが、加害者には可能です。加害者の影響はすごく大きいと理解してほしいのです」 監護者による影響力とは、まさしくこのように大きく、被監護者の意思に反した性関係の強要を行うことはごく容易なことといえる。
ヒアリングに参加した1人であるSIAb.のけいこさんは自身の経験について次のように述べている(前掲のHPより。SIAb.は近親姦虐待の被害当事者(以下、当事者と略称)が主体となって、近親姦虐待被害に特化したピアサポートを、2013 年4 月の発足以来行っている)。「私は誰かが気づいて、助け出して欲しい気持ちと同時に、世間にバレることで、私や家族がその先どうなるかが不安で、怖くて誰にも言えなかったのです」「母は、自分が子供の時代に持てなかった、『家族』を作り上げ、必死で守ろうとしました。そのために、姉や私に『我慢して欲しい』と頭を下げました」「なぜみんな、苦しんでいるのに口を閉じたのでしょう?行く先が見えないからです。恥だからです」またSIAb.の参加者2人の例から「子どもは助けを求めたり、何らかのサインを発信していて、しかし、それをキャッチしたり、安全に介入できるような知識や経験のある人たちに繋がれなければ、見過ごされ、状態を悪化させ、あきらめてしまう」とも述べている。被監護者が監護者の影響力から逃れることがいかに困難であるかがわかる。
性的虐待の加害者は、暴力や脅迫によって被害者に加害行為をする場合もあるが、グルーミングと言われる優しく手なずけるような態度で接することも多い。加害者から「お前が可愛いからやるのだ」「誰でもこういうことをしている」と言われ、受けている行為の意味がわからない場合もある。拒否すると加害者が不機嫌になったり、他の家族に対して暴力をふるう場合に、加害者の機嫌を取ったり、他の家族を守るために、被害者が自ら性関係をもとうとする場合もある。こうした場合に一見「合意」の上で性関係が行われているように見えたとしても、決して「真の合意による性交」とは言えないのである。
法制審議会において、「家族や先生から嫌われたくなかったという、任意の意思に基づいている」「居場所を作るためにそういう関係に積極的に入っていくこともあり得る」などという例示がなされていたが、「嫌われたくないためには性関係に応じざるを得ない状況」や「そうまでして居場所を作らなければならなかった状況」があったということである。「性関係に応じなくても家族や先生に嫌われることはない」「性関係に応じなくても居場所はある」という状況でなければ「真の合意による性交」とは言えない。
監護者に対して被監護者が積極的に関係を迫って監護者が応じてしまった場合も罰せられるのかという議論もなされていたが、実際は被監護者が逆らえない状況であったとしても、「被監護者が積極的に関係を迫った」と主張する監護者は多く、支配関係の中で被監護者が積極的に関係を迫ったかのように見える行動を取らざるを得ない状況も現実にある。いずれにしても監護者との性関係によって被監護者は自分自身を性的な価値しかないと思わされて自己尊重感を損なわれてしまったり、安全で対等な対人関係を学習することができず、その後の人生に大きな困難を生じさせてしまうのである。このような現実において、監護者の行為が重大な人権侵害であり社会としても許されない行為であることを明確に示す意義は大きい。
「虐待の事案は理想的には親子の再統合に向かうべきもの」という発言もあるが、性虐待の事例では、加害親の元に戻った被害児童が再被害にあう確率は非常に高いというデータもあり、子どもの福祉・子どもの性的自由の保障を考えるのであれば、加害親を適正に処罰することによって被害児童を守ることが求められているのである。児童福祉法で処罰することで何が問題なのかというよりは、本来は刑法で裁いてほしいのに、それが困難であるので児童福祉法での処罰で対応せざるを得ないことが現実であるのだから、刑法で裁けるようになるのが当然といえる。
第178条の抗拒不能の要件で処罰が可能ではないかという意見もあるが、実際にはどれだけ抗拒不能であったのかを被害者が厳しく問われることが現実である。被害者が同意していなかったことに加害者が気づかなかったので準強姦罪が成立しないとして無罪判決が出されたゴルフ場経営者の例もある。私たちは、監護者による処罰規定だけでは対象が狭く、教師と生徒、上司と部下なども地位関係性を利用した性犯罪の類型に含めるべきであると考えている。

4 非親告罪化について

先述のけいこさんのヒアリング資料によると「非親告罪化は、潜在化する可能性のある近親姦虐待を公にし、被害者だけでなく、家族や加害者も、支援や治療などの社会資源につなげるきっかけになり、ひいては社会問題の改善や犯罪の原因を無くすことに繋がる」
被害者が加害者を処罰してほしいと警察に訴えても「証拠がない」「抵抗していない」「捜査・裁判は被害者にとって負担が大きい」など様々な理由によって事件化されない現実がある。本来は口頭で加害者への処罰の意思表明をすればすむはずなのに「告訴状を出してくれば捜査する」と言われる場合もあり、性犯罪を事件化することへの壁は厚い。警察が性犯罪の捜査を避ける手段として親告罪であることを利用している現実がある。
被害直後の被害者が混乱状態であるので、非親告罪化された場合に捜査や裁判への協力要請を拒否できず、刑事手続き上の苦痛を避けられないのではないかという意見もあったが、そのことは親告罪を維持する理由とはならないと考える。被害者の利益を守るためには、弁護士や性暴力被害者のためのワンストップセンターなどの支援員などが捜査の初期段階から支援に関わるシステムを強化したり、捜査・裁判関係者への更なる研修などによって、被害者の負担が大きくならないようにすることが重要である。

5 加害者への刑罰以外の対応について

法制審議会において、虐待事例では加害者も虐待の被害者であることも多く、加害者に対して刑事罰よりもカウンセリングや教育プログラムなどの重要性が述べられていた。山本潤さんは「自分の行為がどれほどの被害を与えているのかを理解する事は、加害者にとっても、大事なことだと私は考えています。私の父は児童虐待の被害者でした。だからと言って、彼が私に性加害をしていいという理由にはなりません。捕まえて、罪を問う必要があったと思います。その中で、彼も自分の傷つきや、自分の行動が何をもたらしたのか、気づくチャンスがあったかもしれません。まっとうな人間として生きられたかもしれません。そういうチャンスもなく、私は父を死ねと呪い続け、私たちは親子のつながりを失いました」と述べている。加害者が自らを加害者であると認めることが困難である現実があるので、適正な処罰とセットで実施することが不可避である。
以上

【賛同41団体】 性暴力と刑法を考える当事者の会/パープル・ユニオン/NPO法人男女平等参画推進みなと(GEM)/NPO法人博多ウィメンズカウンセリング/(有)フェミニストセラピィ”なかま”/性暴力を許さない女の会/セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる/ウィメンズカウンセリング京都/NPO法人アーシャ/すぺーすアライズ/地域支援ネット そよ風/NPO法人ひこばえ/NPO活動法人なら人権情報センター/AWS/北京JAC(世界女性会議ロビイングネットワーク)/NPO法人女性ネットSaya-Saya/ふぇみん婦人民主クラブ/認定NPO法人サバイバルネット・ライフ/認定NPO法人ウイメンズハウスとちぎ/NPO法人サンタピアップ/NPO法人全国女性シェルターネット/NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク/NPO法人ハーティ仙台/NPO法人ホッとるーむふくやま/NPO法人アウンジャ/クオータ制の実現をめざす会/NPO法人フェミニストカウンセリング東京/NPO法人 女性の安全と健康のための支援教育センター/W・Sひょうご/女のサポートライン/NPO法人性暴力救援センター・東京/北海道ウイメンズ・ユニオン/NPO法人女のスペース・おん/(社)女性相談ネット埼玉/NPO法人フェミニストカウンセリング神戸/フェミニストカウンセリング堺/NPO法人女性サポート大阪/NPO法人アジア女性資料センター/女性と人権全国ネットワーク/NPO法人さんかくナビ/NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク
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【2016/06/29 18:41】 | 声明・提言
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